現在連載中の『極黒のブリュンヒルデ』をはじめ、デビュー作の『エルフェンリート』、スキージャンプ漫画『ノノノノ』、そして大問題作『君は淫らな僕の女王』(原作)などの岡本倫先生の作品の感想や考察を書いています。他にも、日常の出来事や漫画・アニメ・ゲームの感想、ライトノベルの執筆をしております。どうぞごゆっくり見てください。
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美しき妖魔。
2014-08-31 Sun 20:27

 進捗状況が悪いです……。

 イマジネーションが沸けど、なかなか筆が進まない蔵間マリコです。
 さてと、日曜日ですので、いつものコーナーを更新しますよ~。貧乏高校生の夏目大和と、ネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナの共同生活を描いたオリジナルのライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』を。
 う~ん、第11羽を書き始めてから調子が悪いです~。ちゃんと先にシナリオを書いて、ネタになるものは色々とメモメモして、時間が許される限りはPCに向かってキーボードを叩いているのですが……。10話目は週14ページペースで書けたものが、その半分の執筆スピードですから。スタートダッシュに失敗しちゃったかなあ?
 とまあ、今一調子が上がらないライトノベルの執筆ですが、その話を長々と話すわけにはいきません。というわけで、そろそろ本編へと入らせてもらいます。いつも言っていることですけど、文章と内容はかなり残念なものですよ?それでも、読んでくれたら非常にありがたいです。出来れば、感想なんかも書いてくれるとなおのこと嬉しいです。
 それでは、今回の彼女たちの極秘事項(トップシークレット)をどうぞ。
            第10話 不可思議な少女(ミスティック・ガール)(2)


「なぁ、妙。こっちのほうに何があるんだ?」
「もう少しですよ、大和さま」
 俺は、妙に言われるがままに目的地の場所へと歩いていた。人気(ひとけ)の多い商店街や橘駅のある海沿いではなく、葉っぱや蔦が延び放題なコンクリート塀が目立つ山沿いの道路を。
 こんな場所にお勧めの撮影スポットがあるというのだろうか? なんだか不安になってきた。
 しかも、クリーム色のリブ生地春物セーターに、白と黒のチェック柄スカート、黒タイツとやたらと力を入れている。どう考えても、デート目的の服装である。
「ところで、大和さま」
「なんだ?」
「大和さまはいると思いますか?」
「何がだよ」
「物の怪の存在を」
「えっ?」
 妙の唐突もない質問に、目が点になってしまった。
「大和さま、私は冗談で言っているわけじゃないですよ」
「い、いや、いきなり物の怪の話をされてもさあ……」
「物の怪ですよ、物の怪。座敷童とか、女郎蜘蛛(じょろうぐも)とか、化け猫とか、雪女とか、ろくろ首とか、一つ目小僧とか、お岩さんとか、鵺(ぬえ)とか、泥田坊(どろたぼう)とか、がしゃどくろとか、枕返しとか、陰摩羅鬼(おんもらき)とか、釣瓶(つるべ)落としとか、百目とか、ツチノコとか、天狗とか、ぬらりひょんとか、付喪(つくも)神とか、バックベアードとか」
「バックベアードは、違うだろ。それに、陰摩羅鬼ってなんだよ。お漏らしでもさせる妖怪か?」
「日本と中国に伝わる妖怪です。死体から発せられる気が鶴や鷲に変化して、人を驚かす妖怪なんですよ。マイナーですけど、立派な妖怪です」
「へー」
 俺は適当に聞き流した。いきなり妖怪の話を振られても、興味を持てるわけがない。
「で、大和さまは妖怪を信じていますか?」
「信じているわけないだろ」
 俺は科学で証明できないことを信用していない性質(たち)だ。他人に言われたからといって信用するわけでもないし、証拠も存在も実際に見なければ信用しない。世の中にある、未知に包まれた生物や存在の99パーセントは見間違えかガセ。それが俺の信条である。
「でも、宇宙人の存在は信用していますよね」
「あれは実際に見たし、経験したからだ。ネコ耳とネコの尻尾を直に生やして、オーバーテクノロジーを駆使するんだからさ」
「じゃあ、いてもおかしいじゃないですか。信用していなかったものが、この世に存在していたのですから」
 そのように言われると否定できない。信じていなかった宇宙人が、実在した。だから、他の空想的存在もいるという可能性があってもおかしくはない。
 それでも、俺は信用するわけにはいかなかった。物の怪など、人の恐怖心や欲から生まれた存在。そんな科学で証明できない存在、信用できるわけがない。
「とにかく、俺は物の怪の存在を信じていないからな」
「そうですか……」
 妙の表情はどことなく寂しげだった。
 それでもすぐに元のニッコリとした表情に戻った。
「でも、大和さまも物の怪の存在を信用するようになりますよ」
「はあ……」
 物の怪の存在を信用するようになる。信用はしていないけど、それがどういうことなのか見物(みもの)である。
「で、目的地はどのくらいで着く?」
「それならここですよ、大和さま」
 妙は、右手にある古びた石段を指した。
「もしかして、ここがお前の言っていた撮影スポットというのか?」
「はい、橘神社がお勧めスポットです」

 橘神社。
 橘町の北部、橘山に点在する神社である。
 しかし、神社とは殆ど名ばかりの施設。誰も手入れをしていないためか、廃墟同然。石段や石畳は苔に侵食され、雑草は生え放題、一対のお稲荷様も一体が行方不明、社もボロボロ。こんな状態では誰もお参りするわけがない。ここ最近で来たのは天体観測に来た俺とそら、それとUFOを隠しているデュタとミューナのネコミミ宇宙人2人ぐらいだ。
 橘神社は地元の人間にも忘れられた場所と言っても過言でもない。

「こんな場所に何があるっていうんだ? もしかして、物の怪が出てくるなんて言うのか?」
「そうかもしれません。とにかく、境内まで行けば分かりますよ」
「はぁ」
 こんな寂れた神社ならば、肝試しなどにはおあつらえ向きのスポットであろう。心霊写真なんかも取れるかもしれない。
 ただ、何度も言っているが、幽霊や物の怪の類はこの世にはいない。科学で説明できないことと実際に見ていないのだから信用できるわけがない、いるわけがない。
 俺は苔むした石段を一歩一歩踏みしめる。
 以前と同じように少し滑りやすく、少しだけ気持ちが悪い。もっとも、土砂崩れの現場の時に歩いた森ほどではないが。
「はやく、はやく!!」
 妙は一足早く石段の最上段まで駆け上る。そんなに急いで何になる、神社は逃げるわけじゃないんだからさ。
「で、ここがお前の見せたい場所というわけか」
「はい」
 石段を昇りきった先に待ち構えていたのは、以前と何ら変わらぬ橘神社だった。
「どうですか、大和さま」
「随分とボロボロな神社だな」
 見たまんまの感想を言った。それが一番無難だと思ったからだ。
「大和さま、ロマンがありませんよ。こういうのを悠久の時を経たと言うんですよ」
「どっちにしろ同じだろ」
 俺は石畳から少し離れた手水舎(ちょうずや)を覗き込む。落ち葉が溜まりに溜まり、ヘドロともなんとも言えない不気味で恐ろしく臭い物体が浮いている。見なければよかった。
「今では参拝する人は殆どいませんが、昔は多くの人が参拝をしていたのかもしれませんね。そして、多くのドラマが生まれたのかもしれませんね。いいえ、きっとあったはずです」
「そんな大袈裟な」
 俺は拝殿(はいでん)の隣にちょこんと置いてある石碑を調べる。こちらも苔がびっしりと生えているためか、何が書いているか分からない。見えたとしても、学のない俺には読むことは出来ないだろうが。
「大和さま、この町の歴史を知っていますか?」
「まあ、かじった程度には」
 それは過大でも過小でもない。以前、東雲屋敷で契約書を貰った時、執事から東雲家の昔話を聞いたぐらいで他のことは全く知らない。その程度にしか橘町の歴史を知らないのだ。
「でしたら、知っていますか? あの伝説を」
「何をだ?」
「橘町の守護をする物の怪の伝説を。美しくも悲しい物の怪の伝説を」
 妙の雰囲気ががらりと変わった。
 今までの妙は不思議ちゃんという印象であったが、今の妙は違う。何か心に秘めつつも、相手をたぶらかそうとする魔性の女の顔だ。
 俺は妙の変わり様に動揺が隠せなかった。
「大和さま、その顔だと知らないようですね」
「あ、ああ……」
「仕方ないですよね。この場所自体が忘れ去られていたのですから」
「この場所とお前の言っていた物の怪が関係あるというのか?」
「そうですよ」
 何か物言いたげな言い回しに、艶やかな表情。やはり、今の妙はどこかおかしい。何かに取り憑かれたような雰囲気である。
「物の怪の伝説の始まりは550年前のこと」
 妙は、俺が調べていた石碑を滑らせるかのように指で触れる。まるで子供を撫でるかのように。
「この橘の山には、子狐が住んでいました」
「子狐?」
「その頃の橘は飢饉の影響により、多くの死者を出していました。この子狐の親も飢えで命を落とし、子狐も飢えで命が尽きる寸前でした」
 もしかして、東雲屋敷で働く執事の言っていた飢饉のことであろうか?
「そんな中、1人の痩せ細った少年が子狐に食料を与えました」
 石碑を前に、天を仰ぐ妙。木々から差し込む太陽光が、妙を妖しくも神秘的にドレスアップする。
「子狐は少年に深く感謝し、少年に恩返しをしたいと決意しました」
「それは随分と義理深い子狐だな」
「しかし、この姿のままでは恩返しをすることは出来ない。仮に人の前に現れれば、狩られかねない。子狐は途方にくれました」
 そりゃそうだ。飢饉で飢えている人たちが大勢いるというのに、姿を現せば「私を食べてください」と言っているようなものだ。
「そんなある日、子狐は不可思議な力を持つ1人の女性と出会いました。呪術とも奇跡ともいえる不思議な力を持ち、動物の言葉を理解する不思議な女性が」
 妙は石碑を後にし、境内へと戻る。その時のなびいた髪は、金糸と言わんばかりに美しく輝いていた。
「女性は子狐に教えました。10年間徳を積み重ねれば、人の姿になれるはずだと」
 ふと空から一匹の雀が現れ、妙の右手へと乗った。それはまるで、妙が止まり木だと思わせるほどにごくごく自然に。
「それを教わった子狐は、誰にも気付かれぬように人々の生活を支えました。一日がかりで集めた木の実を村に残したり、日照り続きの日に水源へと導いたり、悟られぬように遭難した旅人を街道へと戻したりと。そんな日々が10年間続きました」
 誰にも気付かれずに、人助けをする。それも10年続けるとなると、どれだけ難しいことか想像が付かない。俺なら絶対に無理だ。
「子狐は徳を重ねるに連れて、少しずつ不思議な力を持つようになりました。そして、ちょうど10年目の日、女性の言っていた通りに狐は人間の少女の姿、妖狐(ようこ)となりました」
 俺はいつの間にか無言になっていた。息を呑むのも忘れていた。それほどに、妙の話す昔話に没入していた。
「妖狐は、青年に会いに行きました。青年は最初驚きましたが、助けてくれことを覚えていたのか理解してくれました」
 妙は右手に乗った雀を左手で優しく撫でる。雀はとても気持ち良さそうに鳴いた。
「妖狐は、青年とともに人々の手助けを始めました。妖狐の少女は、怪我や病に悩まされている人々を癒し、青年は薬を他の地域に配りに」
 妙が雀を撫で終えると、雀は青い青い空へと飛び立った。その行き先は、俺たちには分からない。分からないが、とても気持ちよく飛んで行ったのかもしれない。
「青年とともに村の人たちを助ける日々が続くうちに、妖狐は青年にある感情を抱きました」
「それって、もしかして……」
「ええ、恋心です」
 妙は穏やかでありながらも、どこか艶かしい笑みを見せた。見つめていると吸い込まれそうなほどの妖しさを帯びて。
「ですが、彼女は自分が人とは違う存在であることを心の片隅でいつも思っていました。それ故に、青年に打ち明かすことができませんでした」
 種族が違うから告白できない。それは、ネコミミ宇宙人のミューナとイヌ耳宇宙人のリリィがなかなか打ち解けれなかったのと同じようなものかもしれない。
「それからしばらく、青年は新しい薬を手に入れるために旅へと出ることになりました。1年近くかかる長く危険な旅に」
 艶やかに微笑んでいた妙は、翻り背中を見せた。
「妖狐も旅へ着いて行くと懇願しましたが、村人たちを助けるために山に残ってほしいと青年に断られました。妖狐は寂しげな表情を見せました」
 それは少女を思っての気遣いに違いない。待つにしても、着いて行くにしても辛いものになるのは間違いないが。
「その代わり、青年はある約束をしました」
「ある約束?」
「彼女が17歳になるまでに帰ってくると。そして、17歳の誕生日に結婚を契ると」
「もしかして、それが……」
「大和さま、少し場所を変えましょう」
「あ、ああ……」
 俺は妙に導かれるままに、神社の右沿いの小道へと歩んだ。
 とはいっても、小道というほどの小道ではない。石畳などで舗装されているわけでなく、人がなんとか歩ける程度のもので、こちらも雑草が伸びきっている。適切な言葉で言うならば、獣道だ。
 こんなとこに何があるのだろうか? こんなところに建物があるわけでもないし、このまま山奥に行けば迷子になりそうだ。
 しかし、思った以上に目的地への到着は早かった。
 俺と妙の前にそびえる大樹。
 何百年の時を経たのだろうか。数多の皺を刻み、複雑極まる形を形容し、注連縄に深々と食い込むほどに成長をしている。
 森の中であるために気付かなかったが、こんなに大きくて立派な御神木があったなんて。本当にここは人に忘れられた場所なのかもしれない。
「これは驚いた……」
「うふふ、この橘町を陰ながら支える御神木ですからね」
 背中を向けたまま、妙は変わらず色めかしい声で返答をする。
「しかし、これが何か関係があるのか?」
「話を続けましょう」
 妙は再び青年と妖狐の物語を語り始める。
「妖狐は、自分の誕生を知りませんでした。それでも、彼女は男が戻ってくる日を誕生日にすると心に誓いました」
「とてもロマンチックな昔話だな。こんなに慕われた男も、それを募らせる妖狐もさぞかし幸せだっただろうな」
 後々の感想ではあるが、俺はそんなことを言わなければ良かったと後悔している。物語の結末を知らないのに、こんなことを言ったことに。
「ええ、幸せだったかもしれません。だけど、青年は戻ってきませんでした」
「えっ」
「戦に巻き込まれたとも、流行り病に倒れたとも、自然災害に巻き込まれたとも言われています。男は、この橘の地へと2度と戻って来ることはありませんでした」
「そんな……」
「それでも、妖狐は青年を待ちました。晴れの日も、激しく降りしきる雨の日も、太陽の照りつける暑い日も、冷たく凍える雪の日も。1年、3年、10年、30年、100年……。青年の帰りをこの橘の山で待ち続けました」
 戻ってこないことが分かっていても、それでも愛する者のために待ち続けなければならない。それは、愛する者への想いが生み出した呪いと言ってもいいかもしれない。
「その間(かん)、男を待ち続ける妖狐を奉るための神社が造営され、御神木が植えられました。この場所は、2人の思い出の場所といってもいいでしょう」
 朽ち果てている以上は大した理由がなく造られたと思ったが、そのような立派な経緯があるとは。見た目だけでは分からないのは人だけではない、建物も同じということか。
「しかし、妖狐も永遠ではありませんでした。環境の変化や時間の経過。姿こそは少女のままでしたが、徐々に力が衰え始めました」
「……」
「そこで妖狐は、この御神木の中で眠ることを決めました。数年に一度、男が帰ってきたかを確認するために、妖狐として橘の山に現れることを決めて」
 その物語の長さは、東雲家のものに比べると短い。それでも、数百年に渡る妖狐の恋というものはそれに負けずとも劣らずのものがある。
「時が経つにつれ、この神社にまつわる昔話は風化し、妖狐の存在は信用されなくなりました。それでも、ただただ待ちました。男が帰ってくることを期待して。そして……」
「もしかして、その男というのは……、うわぁっ!!」
 瞬間、強烈な風が襲った。直視できないほどの強風が。
 俺は砂埃が入らまいと、腕で顔を庇う。その時間、およそ5秒間。
 そのたった5秒間という短時間で、目の前で有り得ないことが起きたのだ。
 目の前にいるのは、先と変わらず橘妙。
 しかし、先とは違う点が2つあった。
 キツネの耳とキツネの尻尾があるということだ。
 それもファミリーレストラン『ジュリー』の時のチープなものとは違う。本物の狐と何ら変わらぬ血の宿った耳と尻尾。
「大和さま、あなたは私の旦那さまの生まれ変わりでございます」
 妙はどことなく大人びた微笑を見せて告白した。
「お、俺がその昔話に登場する男の生まれ変わり!? そんなわけだないだろ!!」
 妙の話した昔話は、確かに引き込まれるものがあった。それに、朝見た夢の内容も昔話と一致する部分もある。橘神社と思わしき神社に、古めかしい衣装、そしてキツネ耳とキツネの尻尾を生やした妙。夢にしては、あまりにも出来すぎた内容だ。
 それでも、俺は信用することができなかった。
「どうしてですか?」
「証拠が無いじゃないか」
「証拠? それは必要なものでしょうか?」
 妙は子供が大人に質問を投げかけるかのような表情で俺を見つめる。さっきまでは大人びた雰囲気だったのに、今度は子供っぽい態度で上手くかわす。いくらなんでもズルすぎる。
「大体、それはこの神社の昔話であって、物の怪が存在したというのも怪しいじゃないか。橘町を救った人はいたもしれないけど、妖狐の話は脚色だ。転校時もそうだけど、変な冗談を言うんじゃない」
 妙の不可解な発言にどぎまぎしていたが、俺は可能な限りに冷静を装った。昔話のせいで、本当に結婚でもしたらたまったもんじゃない。
 俺と妙の間に流れる奇妙な空気と沈黙。それは、10秒以上のものに及んだ。
 その流れを断ち切ったのは、妙だった。
「そうですね、この昔話は昔の人が作ったものですからね。大和さまが、この物語に登場する男の人ではないかもしれませんね」
 思いのほかサッパリとした表情だった。ショックを隠していたのかもしれないが。
「大和さま、私の語る昔話はどうでしたか?」
「とても面白かったよ。学園祭の部活動のレポートに、この昔話のことと書くよ」
 少し気の毒だったかもしれない。真偽はどうであれ、妙の気持ちを踏みにじったような気がする。もう少し上手い断り方があったかもしれない。でも、今の俺に言えることはこれしかなかった。
「それと、これだけは極秘事項(トップシークレット)にしてくださいね、大和さま」
「ん?」
「私が妖狐であることを」
「だから、それは作り話か何か……」
「大和さま、どうせここに来たのですから記念写真を一緒に写しましょう!! 私の将来の旦那さまなんですから断る理由なんて無いですよね」
 妙は一切聞く耳などなかった。完全にマイペースになっている。
「お前、以前は写真撮影が嫌いだって言っていたじゃな……」
「準備できましたよー」
 いつの間にか、妙は大樹を背景にポーズまでとっていた。
「はあ……、仕方ない。一度だけだぞ」
「大和さまはとても優しいですね」
 俺は、懐にしまいこんでいた銀色のデジタルカメラを取り出した。
 このデジタルカメラは、先日購入したものだ。カメラといっても何を買えばいいのか分からず、写真部部長の瀬良リリィとともに東雲市のカメラショップで薦められた。機能こそは最低限に絞られているが、3億2000万画素、光学ズーム100倍、夜景完全対応、通常のカメラと何ら変わらない立体感がウリというもの。2万円と貧乏高校生には財布に優しくない値段だったが、初心者でもある程度出費をしないと損をすると言われたので、このデジカメで妥協した。先日買ったばかりなので、まだ使いこなせてはいないが、それでも使い勝手はリリィの言っていたようになかなかのもの。流石、カメラ好きなだけある。
「よし、これでタイマーもばっちりだ。15秒後には写すぞ」
「分かりましたわ、大和さま」
「5、4、3、2、1……」
「チーズっ!!」
「チーズっ!!」

 どうでしたか、今回の彼女たちの極秘事項(トップシークレット)は?
 今回は夏目大和の学園祭の課題消化もとい橘妙とのデートと秘密の真相を描きました。この場面は、自分の中でも練りに練った場面ですので、やる気でまくりで絶好調でしたねえ。物語の肝の部分の一つとも言える場面ですから。
 さて、今回のパートで正体が明らかになった橘妙ですが、何故に橘妙を妖狐にしたか、それは色々と理由があります。秘密を持つ女性、そして人ならざるものとして描かれる存在の一つに妖狐であるというケースが創作物で往々にしてあるということから着目しました。ある意味、テンプレートではありますけど、極秘秘密(トップシークレット)というものにテーマを置いているこの作品にうってつけだと思ったからです。特に、橘妙の性格にピッタリはまっていますし。後はまあ、ケモノ耳が好きだからかな?
 ただ言っておきますが、橘妙の秘密は終わりではありませんよ。色々と秘密を匂わせていたとはいえ、橘妙の正体が橘山に昔から住む妖狐、それだけで真相終わりですとあまりにもキャラが弱いですし、10話目の序盤なのにいきなり正体を明らかにしていますからね。詳しいことは語れませんが、そこら辺のオチというものはしっかり考えていますよ?まあ、一つだけ言えることは複線がある、それだけは言っておく。

 苦戦はしているけど、なかなか楽しく書いている彼女たちの極秘事項(トップシークレット)
 さて、次回は予定通りに行けば日曜日更新。妙の正体を知った大和は、果たしてどのようなアクションを取るのだろうか?そして、妙とのデートはどのような展開を迎えるのか?それは、見てのお楽しみということで。

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